kigyostartupのブログ

読んだことを片っ端から忘れてしまうので、忘れないように、要約を記録することにしました。

労働組合とは何か

日米英の労働組合の歴史を比較解説しながら、日本の特殊な労働環条件を際立たせたうえで、企業間競争におけるコスト要因のひとつである労働条件は、1企業が個別に労働者に対して一方的に決めるのではなく、産業横断的な労働条件の平準化によって企業間競争の埒外に置くことで、賃金の下降圧力がなくなり、労働者のみならず、特に中小企業にとっては大企業との競争緩和がもたらされることになるとしています。

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第一章、第二章では、労働組合が確立するまでの歴史を振り返り、中世ヨーロッパ社会のギルドに今日の労働組合の原型を見ながら、封建領主の支配の及ばなかったヨーロッパ市民社会では職業型の労働組合へと発展の過程が見えるのに対して、日本では領主の支配が強くギルドや市民社会が生まれず、職業型の労働組合の発展することがなかったとした後、ストライキの実行が組合員同士の約束として、抜け駆けなしに参加しなければ、その効力が失われるものだと気付かされ、また、熟練労働者が組合を支配し徒弟制度によって職域を囲い込むなかで、同一労働同一賃金のルーツを見ます。

Be United and Industrious、団結せよ、そして勤勉であれ、だそうです。

第三章では、労働組合はいかなる政治団体にも従属してはならない、というマルクスの指摘に触れ、日本の労働組合は革命の道具だったに過ぎないと断じます。

第四章では、再び歴史を振り返り、ロンドン・ドックなどのストライキの勝利を紹介した後、代替可能な労働者の全てを組織化するために、職業別労働組合とは別な、一般労働者組合が成立して労働市場を規制し、ストライキによる圧力を利用しつつ、社会保障を担ったことが今日の社会政策に繋がる一方で、職業別労働組合産業別労働組合に変貌し、その発展の経緯に照らせば、日本では一企業一組合が正しく継承されていないと指摘すると、やがて労働党が登場するちに自由党が労働者の取り込みを図り「社会自由主義」を政策理念としていることについて、日本では掲げられることがなかったとし、ワーキングプア問題を抱える日本においてイギリスのニュー・ユニオニズムから福祉国家へと至る過程は参考になると提案します。

第五章では、アメリカの労働運動の歴史を振り返り、旧移民と新移民の分断や、メーデーの起源を見た後、血なまぐさい悲惨なエピソードを幾つか交えながら、企業の組合排斥による労働組合の敗北の後に、再び大企業に挑み勝利する様を解説し、日本にも見られる企業内に存在する組合とは別に、アメリカでは産業別労働組合が入り込んで、交渉権を争う様子を見つつ、日本の労働組合の再生には、大企業に偏るアメリカの労働協約よりも、ヨーロッパの方を参考にすることを提案します。

第六章では、大量生産時代に反熟練労働者にとって不遇の時代経て産業別労働組合へと変化する中で、職務の概念を獲得し、労働条件が企業外在的に定まることによって、労働者が企業間競争に巻き込まれずに済んでいることを挙げ、一方で日本では労働条件の決定が企業内在的であり、そのために労働者が企業間競争に巻き込まれて過酷な状況であると指摘します。

第七章では、日本の歴史を振り返り、戦前・戦後の産業別労働組合の成立の失敗を多数見ることになり、労働者の従業員化という日本独自の形態の中で、年功賃金による流動の阻止が図られ、雇用主が労働条件を決める特殊性を指摘したうえで、労働団体の組合員数の推移を用いて日本の労度運動が衰退の一途を辿っていることを突き付けます。

第8章では、90年代後半から始まった日本型雇用形態の崩壊によって、非正規労働を強いられ将来に希望を見いだせない過酷な状況の、十九世紀イギリスの野蛮な労働市場との類似性から、自覚した個人が団結した労働組合の成立に期待を寄せます。