kigyostartupのブログ

読んだことを片っ端から忘れてしまうので、忘れないように、要約を記録することにしました。

現代日本政治史 「改革の政治」とオルタナティヴ

冷戦の終結によって、保守vs革新の構造が消滅し、保守しか残らなくなった状況で、新たな対立軸を模索する与野党が、いずれも改革に目を付け競い合い、目まぐるしく分裂や合流を繰り返し、政権交代も果たしながらも、未だに対立軸を見いだせずにいる日本政治の、80年代以降の各年代の政権と野党の動向を振り返り、オルタナティブとして新たな展望を提案している。

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序章では、冷戦の終結によって、それまでの保守vs革新の対立軸から、革新が消滅し、保守しかいない状況に陥ると、守旧派と改革派に内部分裂し、経済のグローバル化の中で新自由主義へと進んだことを指摘し、その後の民主党政権大阪維新の会、第二次安倍政権を論じたうえで、日本政治に新しい統治性の枠組みを提案したいとしている。

第1章では、55年体制下での、自民党社会党のそれぞれの支持基盤として、自民党が大企業と農村部、中小企業を取り込んでいた一方で、社会党は労組を支持基盤としていたことを明示したうえで、冷戦の渦中での中曽根政権の行政改革が、支持基盤の切り崩しであったのに対して、冷戦終結後に起きた革新の消滅に代わる、新たな対立軸を模索するものだったとします。

第2章では、竹下政権末期で調整型政治が行き詰まったことから小沢一郎が改革派を名乗り、守旧派と対立し始め、財界の構想する保守二大政党制や、労働界の画策する社交民路線との融合を経て、新党ブームの後に細川政権が誕生すると小選挙区を導入してもむしろ政権交代を阻害し、村山政権では改革の揺り戻しがありました。

第3章では、90年代の改革の政治の特徴として、官僚や労組が敵視され、国民の自己認識が、労働者であることよりも消費者であることを指向したことが、新自由主義との親和性が高かったとし、小渕・森政権で一旦守旧に揺り戻しがあったことで、改革を旗頭とした野党が次々と離合集散を繰り返し、地方でも改革派の知事が続々と誕生します。

第4章では、小泉政権での構造改革を巡る、社会構造の変化と自民党守旧派の弱体化について解説するなかで、自民党総裁としての権限と首相としての権限を強化したうえで、規制緩和を進め、道路公団や郵便局が民営化等が実現した後、リーマンショックを受けた派遣切りに象徴される、格差による貧困問題が表出します。

第5章では、民主党政権について、その起源として松下政経塾およびその出身者を紹介した後、小沢一郎による社会民主主義への変容を経て、鳩山政権、管政権共に混乱の中で退陣し、野田政権で法案成立と引き換えに政権を失います。

第6章では、橋下徹が登場し衰退の危機にある大阪の立て直しを図るために府知事となり、大阪都構想を引っ提げて大阪維新の会を立ち上げると、公務員を標的に、敵味方を区別して住民の支持を取り付ける手法で選挙に勝ち、その後、国政進出を目指して設立された日本維新の会保守系第三極に位置付けられ、若者の意識調査では、保守の対局である革新と捉えられます。

第7章では、第二次安倍政権を取りあげ、改革というよりも右傾化が目立つとし、アベノミクスが旧来の、市場への国家介入(第一の矢金融緩和)と公共事業による景気刺激(第二の矢)によって守旧保守へと転換する一方で、第三の矢規制緩和は十分ではなかったが、一定の支持を得て安倍一強の長期政権となり、民主党は消えます。

終章では、改革はしょせん保守の中の内ゲバに過ぎず、だからこそ一方の革新もなんでも反対を唱えざるを得ないとして、市民社会の活性化、国家の復権、公正なグローバリズムの三点からオルタナティブを提案します。